神様のイジワル
明日笑うための呪文
電気が中途半端に点いてる、深夜2時。
ただ酒を交わしていただけの男友達である先輩が、私にすがるように抱き着いていた。
「あの、離して下さい」
私の胸に顔を埋めて居る彼は、小さく首を横に振った。
時折、鼻を啜る音がする。
大きい子供が出来た気分だ。
仕方なく、彼の背中に腕を回して包み込むように抱きしめた。
「そんなに悔しいですか?」
何が、とは聞かなくても彼は理解出来るだろう。
そのやけ酒して泣いている原因はそれしかないのだから。
彼は縦に首を動かした。
去年も泣いてたな。皆が居る前だったけど。
そう思うと、ため息混じりに出て来た言葉。
「…辞めればいいのに、そんなに辛いなら」
「ヤダ!」
「あ、喋った」
少し顔を上げて、やっと目が見えるくらい。
真っ赤な目をしている。
「やんなきゃなんねぇの、この仕事してる限り」
「何で?」
「何でって…わかんだろ、やってたんだから」
また顔を隠す彼。
今度は過去のあの空気を思い出して、天井を見上げため息をつく。
私だって分かる、事の重大さは。
だからこそ、この大会に焦点合わせてやったのに報われない、傷が分かるんだ。
そこまでする必要性は?
自信がなくなるかもよ?
たかが一つの事で、全てが嫌にならない?
“神様のイジワル”
“神様のイジワル”
“神様のイジワル”
何度も呟いて、自分の責任じゃないと逃げ出さなければいけないぐらい追い詰められる。
本来楽しい事なのに、何でこんなに苦しめられなきゃいけないんだ。
この先輩だって、
ちらっと視線を落とす。
まだ涙は止まらないらしく、さっきより鳴咽が大きくなっている。
明日には、きっとマイクの前に立って笑顔を見せている。
いや、やらなきゃいけないんだ。
そして来年の今頃、自分達がスポットライトを浴びている夢を見る。
「なぁ」
あ、また喋った。
「なんですか?」と返すと、彼は少し離れた。
そしてさっきとは違って、きちんと私を抱きしめた。
「俺、お前の事好き」
返答が出来ない。
いや、彼も求めてないのか。耳元で彼の喉がなる。
「好き。好き。うん、すげー好き。好きだよ」
「先輩、私」
「言わせろよ」
私が遮ろうとした時、彼の必死な声が聞こえた。
ぐっと頭を手で押さえられているから、表情は見えない。
「今日だけ、いや、一晩。眠るまでだよ。言わせろよ、本音
今日、この日だけでいいから」
卑怯だ、と思った。
そんな寂しそうな声出されたら、何も言えなくなる。
「好き。好きだ。好きなんだよ、お前が」
“神様のイジワル”
“神様のイジワル”
“神様のイジワル”
私より前向きな言葉か。
大人しく抵抗をやめて、目を閉じる。
明日には笑うための呪文。
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意味分かる…かな?
まぁ、某大会のお話です。何でわざわざドリにしたんだ、自分(笑)
主人公は元芸人、相手は現役。
今でも飲みに行く仲で、相手はずっと主人公に好意を寄せていたけど、それを口に出すほどではなかった
ま、弱いときにはどうでもいい事言うよねーってお話です(何)
主人公は運がなかったと、相手は全く関係ない事を。
イメージ的には決勝も終わった後、敗者復活もダメだった感じかな。
チーモン菊地さんとして。なんか片思いっていうか、ひそかに誰かを思って仕事に励むのが似合う
…どんなイメージだ(笑)
てか、これでチーモン決勝行ったらどうしよう(笑)
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